ザ・フェデラリスト(1)【新連載】
今回は、保守思想における必読の書とされる『ザ・フェデラリスト』を読んでいく。※ federalist:連邦主義者
米政治思想史随一の古典と呼び称される『ザ・フェデラリスト』は、やや特殊な書と言えるだろう。本書は、アレグザンダー・ハミルトン、ジョン・ジエイ、ジェイムズ・マディソンの共著である。著者が3名であるのは、本書が、各著者が新聞紙上に別個に発表した85篇の論文を集めたものだからである。
米歴史家のリチャード・B・モリスは、「憲法における比類の無き解説論文であり、後世のどの米作家の作品によっても、幅広さと底深さの両面において勝るもの無き政治学の古典」(”The Forging of the Union”)だと本書を絶賛する。
イギリスから独立した13の植民地は、当初は独立国家の連合を形成していたが、連邦憲法により国家連合でもなく単一国家でもなく、その中間ともいうべき連邦国家を形成することになった。仏政治思想家のアレクシ・ド・トクヴィルは、「連邦は小国のように自由で幸福であり、大国のように輝かしく力強い」(”De la démocratie en Amérique”)と米国連邦制を称している。
☆ ☆ ☆
AFTER an
unequivocal experience of the inefficiency of the subsisting federal
government, you are called upon to deliberate on a new Constitution for the
United States of America. The subject speaks its own importance; comprehending in
its consequences nothing less than the existence of the UNION, the safety and
welfare of the parts of which it is composed, the fate of an empire in many
respects the most interesting in the world. It has been frequently remarked
that it seems to have been reserved to the people of this country, by their
conduct and example, to decide the important question, whether societies of men
are really capable or not of establishing good government from reflection and
choice, or whether they are forever destined to depend for their political
constitutions on accident and force. If there be any truth in the remark, the
crisis at which we are arrived may with propriety be regarded as the era in
which that decision is to be made; and a wrong election of the part we shall
act may, in this view, deserve to be considered as the general misfortune of
mankind. -- The Federalist Papers (1787-88): FEDERALIST 1 Introduction by
Alexander Hamilton
(現存する連邦政府が非効率であることをはっきり経験した後、皆さんは、アメリカ合衆国のための新しい憲法を審議するよう求められています。この問題は、それ自体が重要であり、その結果、連邦の存続、構成する各地域の安全と福祉、多くの点で世界で最も興味深い帝国の運命に他なりません。人間社会が本当に熟考と選択によって良い政府を樹立することが出来るかどうか、それとも永遠に偶然と力に政治構成を依存する運命にあるのかどうか、という重要な問題を決めるのは、この国の人々の行動と手本に留保されているようだとよく言われてきました。この発言に何某かの真実があるやとすれば、我々が辿り着いた危機は、その決定がなされるべき時代と考えるのが妥当なのかも知れません。そして、我々が行動すべき部分の誤った選択は、この観点からすると、人類の一般的な不幸と見做すに値するのかも知れません)―
『フェデラリスト・ペーパーズ』:フェデラリスト1 序論 アレクサンダー・ハミルトン
So numerous indeed
and so powerful are the causes which serve to give a false bias to the
judgment, that we, upon many occasions, see wise and good men on the wrong as
well as on the right side of questions of the first magnitude to society. This
circumstance, if duly attended to, would furnish a lesson of moderation to
those who are ever so much persuaded of their being in the right in any
controversy.
(判断に誤った偏見を与える原因は、実際、非常に多く、しかも非常に強力であるため、社会にとって最も重要な問題で、賢人や善人が正しい側にもいるだけでなく誤った側にいるのも多くの場面で目にします。このような事情にきちんと注意を払えば、どんな論争でも自分が正しいと信じ込まされている人々に、節度の教訓を与えてくれるでしょう)
「節度」を忘れた正義ほど質(たち)の悪いものは無い。
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