ザ・フェデラリスト(4)安全と幸福の平衡
《95 すでに述べたように、人間は生来、すべて自由であり、平等であり、独立しているのだから、だれも自分から同意を与えるのでなければ、この状態から追われて、他人の政治的な権力に服従させられることはありえない。人がその生来の自由を放棄し、市民社会の拘束を受けるようになる唯一の方法は、他人と合意して1つの共同社会に加入し、結合することであるが、その目的は、それぞれ自分の所有物を安全に享有し、社会外の人に対してより大きな安全性を保つことをつうじて、相互に快適で安全で平和な生活を送ることである》(ジョン・ロック「統治論」:『世界の名著27』(中央公論社)大槻晴彦訳:第8章 政治社会の起原について、p. 252)
☆ ☆ ☆
It has until
lately been a received and uncontradicted opinion, that the prosperity of the
people of America depended on their continuing firmly united, and the wishes,
prayers, and efforts of our best and wisest citizens have been constantly
directed to that object. But politicians now appear, who insist that this
opinion is erroneous, and that instead of looking for safety and happiness in
union, we ought to seek it in a division of the States into distinct
confederacies or sovereignties. -- The Federalist
Papers (1787-88): FEDERALIST 2 Concerning Dangers from Foreign Force
and Influence by John Jay
(最近までずっと、米国民の繁栄は、それらが強固に結束し続けることに掛かっているというのが、一般に受け入れられている、議論の余地のない意見であり、我々の最良で最賢な市民の願いと祈りと努力は、絶えずその目的に向けられてきました。しかし今では、この意見は誤りであり、安全や幸福を結合に求めるのではなく、州を個別の連合体や主権に分割することに求めるべきだと主張する政治家が現れています)―『フェデラリスト・ペーパーズ』:フェデラリスト2:外力・影響力による危険について:ジョン・ジェイ
一国に統合することで政治的、経済的に力を拡大することを優先すべきだとするジェイに対し、むしろ細分化されている方が安全や幸福が得られるのではないかと考える人達が登場し、綱引きとなったのは健全なことだと思われる。
However
extraordinary this new doctrine may appear, it nevertheless has its advocates;
and certain characters who were much opposed to it formerly, are at present of
the number. Whatever may be the arguments or inducements which have wrought
this change in the sentiments and declarations of these gentlemen, it certainly
would not be wise in the people at large to adopt these new political tenets
without being fully convinced that they are founded in truth and sound policy. –
Ibid.
(この新しい教義がいかに突飛なものに見えたとしても、それでもなおこれを支持する人達がいます。以前はこれに大反対していた某人物も、現在はその数に加わっています。これらの紳士の感情や宣言に変化を齎(もたら)した議論や動機が何であれ、これらの新しい政治信条が真実と健全な政策に基づくことを十分に確信することなく採用することは、国民全体にとって賢明ではないことは確かでしょう)―
同
the safety of the
people of America against dangers from foreign force depends not only on their
forbearing to give just causes of war to other nations, but also on their
placing and continuing themselves in such a situation as not to invite
hostility or insult; for it need not be observed that there are pretended as
well as just causes of war. -- The Federalist Papers (1787-88): FEDERALIST 4 The
Same Subject Continued by John Jay
(外国勢力からの危険に対するアメリカ国民の安全は、他国に戦争の正当な理由を与えることを慎むだけでなく、敵意や侮辱を招かないような状況に自らを置き続けることに掛かっています。というのは、戦争の正当な理由だけでなく、偽りの理由もあることは言わずもがなですから)―
フェデラリスト4:同じ課題の続き:ジョン・ジェイ
成程、外国勢力からの危険に晒(さら)されないためには、規模は大きい方がよい。が、内部的には、大きくなればなるほど人々の生活に対する配慮が大味になってしまうという危惧もあろう。
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