ハイエク『隷属への道』(41) 全体主義への橋渡し「独占」
独占を志向する資本家たちは他の人々に対し、自分たちが手にしている独占利潤の分け前にあずからせたり、あるいは、おそらくもっと多くの場合、独占の形成は公共の利益となるのだと説得することによって、ある程度まで支持を得るのに成功してきた。(ハイエク『隷属への道』(春秋社)西山千明訳、p. 267)
「競争」を阻害するものに「独占」がある。この「独占」が固定化され、体制化されていくことが問題の始まりである。
このような発展を立法や司法を通じて推進するのに際して、最も重要な役割を果たしてきたのは世論の変化である。この変化が発生したのは、左翼が展開してきた、競争を攻撃する宣伝活動の結果以外の何ものでもない。(同)
最も<世論>に影響を与えるのが新聞やテレビ報道などの「マスコミ」である。一般に「マスコミ」は権力批判を旨とする。そのため左傾化しがちである。「マスコミ」が左傾化し、「競争」を攻撃することで「独占」体制が強化される。
また、きわめてしばしば見られたことであるが、独占を抑制したり排除したりすることを目的として採用された様々な政策が、現実には独占の力を強化することのために役立っているにすぎないことも多い。政府当局による独占の利益の吸い上げは、たとえそれが他のなんらかのグループの利益や国全体の利益を目的としたものであっても、常に新しい既得権益を創り出す傾向を有しており、結果的に独占をいっそう強化することに終わってしまう。(同)
政府が市場に介入し、独占を抑制したり排除したりするために独占の利益を吸い上げる体制もまた新たな<既得権益>を生み出してしまうということである。
そういう点では、独占から得られる利潤が、巨大な特権グループに再配分されるような体制は、独占企業家たちの手にしか利潤が入らない体制に比べて、政治的にはるかに危険なものである可能性が高く、もっと強力なものとなることは確実である。(同、pp. 267-268)
政府による再分配政策は社会主義そのものであり自由競争を阻害する。「独占」を嫌って政府が市場介入し、利益の再分配を行えば、かえって独占を体制化し固定化することになりかねない。
国家による独占とは、独占を制御し管理すべき立場にある国家権力が、披管理体である独占体を逆に保護し守っていくようになってしまうということを意味する。また、独占体の誤った行動を償う責任を政府が引き受けるということ、さらには独占体の活動を批判することが政府への批判となってしまうということを意味する。(同、p. 269)
政府が独占に介入し調整役を買って出てしまえば、この問題は政府の問題となってしまう。これは社会主義的国家統制に他ならない。
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