バーク『フランス革命の省察』(11)「反革命」を説くペイン

The revolutions which formerly took place in the world had nothing in them that interested the bulk of mankind. They extended only to a change of persons and measures, but not of principles, and rose or fell among the common transactions of the moment. What we now behold may not improperly be called a “counter-revolution.” Conquest and tyranny, at some earlier period, dispossessed man of his rights, and he is now recovering them. And as the tide of all human affairs has its ebb and flow in directions contrary to each other, so also is it in this. –- Thomas Paine, Rights of Man

(以前、世界で起こった革命には、人類の大半が関心を寄せるようなものは何もなかった。革命は、個人と手段の変更止まりで、原則の変更にまでは至らず、その時々の一般的な取引の中での栄枯盛衰に過ぎなかった。私達が今見守っているものは、「反革命」と呼んでも差し支えないかもしれない。征服と専制は、以前のある時期に人間の権利を取り上げたが、人間は今それを回復しているところなのだ。そして、すべての人間の問題の潮流が、互いに相反する方向に満ち引きするように、この問題も同様である)―トマス・ペイン『人間の権利』

 「革命」という言葉は、以前は「復古」を意味していた。古き良き時代に戻そうとするのが、元々の「革命」だった。が、ペインは、復古などという生温い改革ではなく、抜本的改革こそが必要だと考えた。昔に戻すのが「革命」というものなら、抜本的改革は「反革命」と呼んでもよいのではないかということである。

 哲学者アレントは次のように解説する。

《「革命」という言葉がすでに新しい意味を獲得していたときでさえ、過去の時代の精神に忠実なトーマス・ペインは依然としてアメリカ革命とフランス革命を「反革命」の名で呼ぶようにまったく熱心に提案していた。この提案が当時もっとも「革命的」な1人であった人物のロから出たというのは奇妙なことだが、それは革命家たちの心情にとって、過去にむかって回転するという復古の観念がどんなにいとしいものであったかを示しているのである。

ペインが望んでいたことは、ただ「革命」という言葉の古い意味を奪い返し、自分の固い信念を表明することだけであった。そしてその信念というのは、当時の諸事件によって人びとは、1度は暴君や征服によって奪われはしたが、それ以前に自分たちが享受していた権利と自由のあった「過去の時代」に復帰したのであるというものであった。しかも彼の「過去の時代」とは、けっして17世紀に理解されていたような歴史以前の仮説的な自然状態ではなく、漠然とはしているが、歴史上の明白な一時代なのである。

 忘れてならないことであるが、ペインが「反革命」という用語を用いたのは、バークが古くからある習慣と歴史によって守られてきたイングランド人の権利を力強く擁護し、人間の権利という新しく流行しはじめた観念に反対したとき、それにたいする返答としてであった。しかし問題はペインが、バークと同じく、絶対的な新しさはこのような権利の真正さや正統性を支持する議論ではなく、逆にそれを反証する議論になるだろうと考えていた点にある》(ハンナ・アレント『革命について』(ちくま学芸文庫)志水速雄訳、pp. 61f)

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