バーク『フランス革命の省察』(14)自由の限定
The institutions of policy, the goods of fortune, the gifts of Providence, are handed down to us, and from us, in the same course and order. Our political system is placed in a just correspondence and symmetry with the order of the world, and with the mode of existence decreed to a permanent body composed of transitory parts,—wherein, by the disposition of a stupendous wisdom, moulding together the great mysterious incorporation of the human race, the whole, at one time, is never old or middle-aged or young, but, in a condition of unchangeable constancy, moves on through the varied tenor of perpetual decay, fall, renovation, and progression.
(政策の制度、運命の財産、摂理の贈物は、同じ道筋と順序で私達に伝わって来て、私達から伝えられて行きます。私達の政治制度は、世界の秩序、そして一時的な部分からなる常設の組織に運命付けられた存在形態と、正に一致し、釣り合った状態に置かれています。そこで、人類の偉大な神秘的な統合を形作っている膨大な英知の意向によって、全体が、一時(いちどき)に、老齢にも、壮齢にも、若齢にもなることなく、不変の恒常的状態の中で、終わりのない衰退、崩壊、修復、進歩といった多様な進路を辿って進むのです)―
cf. 半澤訳、p. 44
過去から受け継がれて来た「伝統」を、責任もって未来へと伝えて行く。それが、過去の恩恵に浴する、今を生きる者たちの責務である。
Thus, by
preserving the method of Nature in the conduct of the state, in what we improve
we are never wholly new, in what we retain we are never wholly obsolete. By
adhering in this manner and on those principles to our forefathers, we are
guided, not by the superstition of antiquarians, but by the spirit of
philosophic analogy.
(このように、国家の行為の中に自然の方法を維持することによって、改良するもので、私達は完全に新しくなることはありませんし、保持するもので、完全に時代遅れになるわけでもありません。このような方法で、そして、それらの原理に基づき、先祖に従うことによって、私達は、好古家の迷信ではなく、哲学者の類推の精神によって導かれるのです)―
cf. 半澤訳、同
国家の根幹は維持しつつ、改良と保持の平衡を保つことが大切だということである。
In this
choice of inheritance we have given to our frame of polity the image of a
relation in blood: binding up the Constitution of our country with our dearest
domestic ties; adopting our fundamental laws into the bosom of our family
affections; keeping inseparable, and cherishing with the warmth of all their
combined and mutually reflected charities, our state, our hearths, our
sepulchres, and our altars.
(このように相続を選択する際、私達は、政治の枠組みに、血縁関係の印象を与えてきました。即ち、私達の最も親密な家庭の絆で我が国の政体を縛り、私達の基本法を家族愛の懐に取り入れ、私達の国家、私達の家庭、私達の墓室、私達の祭壇を切り離さずに、そのすべての組み合わせた、相互反映の慈善の温かさで大切にするのです)―
cf. 半澤訳、同
家族における相続という身近な問題から類推して、政治の枠組みの相続を考えれば、よく理解できるだろうというバーク一流の修辞法(rhetoric)である。
Through the
same plan of a conformity to Nature in our artificial institutions, and by
calling in the aid of her unerring and powerful instincts to fortify the
fallible and feeble contrivances of our reason, we have derived several other,
and those no small benefits, from considering our liberties in the light of an
inheritance. Always acting as if in the presence of canonized forefathers, the
spirit of freedom, leading in itself to misrule and excess, is tempered with an
awful gravity.
(私達の人為的制度において自然に準拠するという同じ計画を通して、また、私達の理性の誤り易く、弱々しい考案を補強するために、自然の確かで強力な本性(ほんせい)の助けを求めることによって、私達は、相続という観点から私達の自由を考えることで、他にも幾つかの、それも小さくない利益を得てきたのです。恰(あたか)も、聖者の列に加えられた先祖の前で常に行動しているかのように、本質的に悪政や越権に繋がる自由の精神は、恐ろしいほど厳粛に緩和されるのです)
<自由>は、ともすれば、その過剰として、放恣(ほうし)、放縦(ほうじゅう)に陥り勝ちである。が、<自由>が相続によって与えられたものである限りにおいて、自ずとそこには限界が生じる。詰まり、社会の秩序を乱さない範囲に<自由>が限定されるということである。
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