バーク『フランス革命の省察』(15)2つの宇宙

This idea of a liberal descent inspires us with a sense of habitual native dignity, which prevents that upstart insolence almost inevitably adhering to and disgracing those who are the first acquirers of any distinction.

(この自由の相続という考えは、習慣的な生来の威厳の意識を私達に吹き込み、初めて名声を獲得した者に付き纏って、面目を失わせることがほとんど避けられないあの鼻持ちならない横柄さを防止するのです)― cf. 半澤訳、p. 45

 「相続された自由」は、頭の中の「観念的自由」とは異なって、歴史に裏打ちされた「抑制の利いた自由」なのである。

By this means our liberty becomes a noble freedom. It carries an imposing and majestic aspect. It has a pedigree and illustrating ancestors. It has its bearings and its ensigns armorial. It has its gallery of portraits, its monumental inscriptions, its records, evidences, and titles.

(この方法によって、私達の自由は高貴な自由となるのです。それは、堂々とした、威厳のある様相を帯びます。そこには、系図とそれを説明する祖先があります。自由には、紋章と紋章旗があります。肖像画の画廊、記念碑の碑文、記録、証拠、称号があります)― cf. 半澤訳、同

 「相続された自由」は、歴史に裏打ちされたればこそ、そこには威風堂々たる威厳が宿る。また、この自由には歴史的根拠があり、頭の中の世界で、妄想を膨らませた、得手勝手な自由とは異なる。

We procure reverence to our civil institutions on the principle upon which Nature teaches us to revere individual men: on account of their age, and on account of those from whom they are descended. All your sophisters cannot produce anything better adapted to preserve a rational and manly freedom than the course that we have pursued, who have chosen our nature rather than our speculations, our breasts rather than our inventions, for the great conservatories and magazines of our rights and privileges.

(私達は、個々の人間を崇(あが)めるよう自然の女神から学ぶ原理に基づき、すなわち、その人の年令ゆえに、そして、自分達がその子孫である人々ゆえに、社会的慣習に従った制度に畏敬の念を抱くのです。貴方がたがいくら詭弁を弄(ろう)したとしても、私達の権利と特権の大きな貯蔵所および倉庫として、思索よりむしろ自然を、想像力よりむしろ心を選んだ私達が追求した道以上に、理性的で人間らしい自由を維持するために適合したものを何ら作り出すことなど出来ません)― cf. 半澤訳、同

 気宇壮大なる宇宙から見れば、人間などちっぽけな存在に過ぎない。そのちっぽけな人間の頭の中で考えることなど、眇々(びょうびょう)たるものでしかない。

 宇宙は2つある。目の前に広がる広大な宇宙と心の中の深遠なる宇宙である。この2つの宇宙を代表し象徴するのが、自生的秩序の宿る「自然」と、心を豊かにする「経験」である。バークは、この畏怖すべき「自然」と、畏敬すべき「経験」を大切にしてきたのが英国であり、その歴史だと言いいたいのだと思われる。

These opposed and conflicting interests, which you considered as so great a blemish in your old and in our present Constitution, interpose a salutary check to all precipitate resolutions. They render deliberation a matter, not of choice, but of necessity; they make all change a subject of compromise, which naturally begets moderation; they produce temperaments, preventing the sore evil of harsh, crude, unqualified reformations, and rendering all the headlong exertions of arbitrary power, in the few or in the many, forever impracticable.

(貴国の旧い国制や我が国の現在の国制における非常に大きな欠点と見做されるこうした利害対立は、すべての向こう見ずな決断を抑制するのに有益です。熟慮は、選択できる問題ではなく、必要なこととなります。すべての変化は、自然に節度を生む妥協の問題となります。厳しい、粗野な、無条件の改革という腹立たしい害悪を防ぎ、少数であれ多数であれ、恣意的な権力を軽率に行使することを永遠に実行できなくする中庸を生み出します)― cf. 半澤訳、p. 46

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