バーク『フランス革命の省察』(18)「愚か者は、天使が踏みつけるのを恐れる所に押し寄せる」

The power, however, of the House of Commons, when least diminished, is as a drop of water in the ocean, compared to that residing in a settled majority of your National Assembly. That assembly, since the destruction of the orders, has no fundamental law, no strict convention, no respected usage to restrain it. Instead of finding themselves obliged to conform to a fixed constitution, they have a power to make a constitution which shall conform to their designs. Nothing in heaven or upon earth can serve as a control on them. What ought to be the heads, the hearts, the dispositions, that are qualified, or that dare, not only to make laws under a fixed constitution, but at one heat to strike out a totally new constitution for a great kingdom, and in every part of it, from the monarch on the throne to the vestry of a parish? But

  "Fools rush in where angels fear to tread."

In such a state of unbounded power, for undefined and undefinable purposes, the evil of a moral and almost physical inaptitude of the man to the function must be the greatest we can conceive to happen in the management of human affairs.

(しかしながら、下院の権力は、最も減少している時でも、貴国の安定多数の国民議会に存在する権力に比べれば、大海の一滴の水のようなものです。貴国の議会には、秩序が破壊されて以来、自制する基本法も、厳格な慣例も、尊敬される慣習もありません。不変の国制に従う義務の代わりに、自分たちの意図に沿った憲法の制定権があるのです。統制するものは天地どこにもありません。不変の国制の下で法律を制定するだけでなく、大王国と、王位にある君主から小教区の集会室まで、そのあらゆる部分でまったく新しい国制を一気に作り出す資格を持つ、あるいは敢えてそれを行う、頭脳、精神、気質とは、如何にあるべきなのでしょうか。しかし

 「愚か者は、天使が踏みつけるのを恐れる所に押し寄せる」

このような無制限の権力の状態で、はっきりせず、明確に出来ない目的のために、その職務に人間が道徳的、そして殆ど肉体的に不向きであることの弊害は、人事を取り扱う際に起こりうる最大のものとなるに違いありません)― cf. 半澤訳、p. 58f

 これまでのものをちゃらにすれば「平等」になる。が、社会を運営していくためには、国民すべてに「平等」に適用される憲法をはじめとする規則が必要となる。それを零から作ろうと考えること自体「驚異」であるが、どうすれば作れると楽観されるのかも分からない。自分に作る資格があると考えることも不遜ではないのか。

 万人に「平等」な法律などこの世に存在したことなどない。おそらく、こればかりは、頭の中の世界でもないだろう。そのような大事業を行おうとするのは、もはや冷静な判断を失っていると言わざるを得ない。熱狂により判断力を失った群集の暴挙、それが「革命」というものなのだと思われる。

 話は変わる。

To be attached to the subdivision, to love the little platoon we belong to in society, is the first principle (the germ, as it were) of public affections. It is the first link in the series by which we proceed towards a love to our country and to mankind.

(社会の中で自分が属する一部分に愛着を持つこと、小集団を愛することは、公共愛の最初の原理(謂わば、芽生え)である。それは、私たちが祖国と人類への愛に向けて進んでいく連続の最初の環(わ)なのです)― cf. 半澤訳、p. 60

 家族愛が郷土愛へ、そして祖国愛や人類愛へと成長し発展していく。健全な愛郷心や愛国心といったものが、「革命」といった社会破壊を抑止することは言うまでもないことである。

When men of rank sacrifice all ideas of dignity to an ambition without a distinct object, and work with low instruments and for low ends, the whole composition becomes low and base.

(地位があっても、明確な目的を持たず、野望のためにすべての威厳観念を犠牲にし、低級な道具で、下劣な目的のために活動すると、全体の組み立てが低く卑劣なものになってしまいます)― cf. 半澤訳、p. 61

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