【新連載】バーク『フランス革命の省察』(1)慎重
今回は、保守思想の父とも呼び称される、英国の思想家であり政治家のエドマンド・バーク(Edmund Burke)の主著『フランス革命の省察』(Reflections on the Revolution in France)を読んでいく。能力的、時間的に厳しいものがあるのだけれども、今回の引用はすべて独自訳を付そうと思っている。原文に当たることによって、バークの言葉遣いから、氏の情熱、心情、息遣いといったものを直に味わいたいと思ってのことである。
尚、訳出に当たっては、以下の翻訳を参考にした。
・『フランス革命の省察』(みすず書房)半沢孝麿訳
※拙訳には、参考までに、同書の頁を付す。
・『フランス革命についての省察』(上)(下)(岩波文庫)中野好之訳
・『フランス革命についての省察』:『世界の名著41』(中公バックス)水田洋訳
★ ★ ★
You see, Sir, by
the long letter I have transmitted to you, that though I do most heartily wish
that France may be animated by a spirit of rational liberty, and that I think
you bound, in all honest policy, to provide a permanent body in which that
spirit may reside, and an effectual organ by which it may act, it is my
misfortune to entertain great doubts concerning several material points in your
late transactions.
(フランスが理性的な自由の精神で鼓舞されること、そして、皆さんが心躍らせ、すべての公正な政策において、その精神が宿る恒久的な組織と、それが作動する効果的な器官を提供されんことを、私は実際忠心から願っておりますけれども、皆さんの最近の取引における幾つかの重要な点につきまして、大きな懸念を抱いていることは、私の遺憾とするところでありますことは、お送りしました長文の手紙からお分かりのことでしょう)― cf. 半澤訳、pp. 7-8
と、バークは、フランス革命の騒擾(そうじょう)に対して、大きな懸念があることを示す。
I must be
tolerably sure, before I venture publicly to congratulate men upon a blessing,
that they have really received one. Flattery corrupts both the receiver and the
giver, and adulation is not of more service to the people than to kings. I
should, therefore, suspend my congratulations on the new liberty of France
until I was informed how it had been combined with government, with public force,
with the discipline and obedience of armies, with the collection of an
effective and well-distributed revenue, with morality and religion, with the
solidity of property, with peace and order, with civil and social manners.
(私は、敢えて公に神の恵みについて人を褒(ほ)めるのであれば、その前に、その人が本当に神の恵みを受けていることを容認できるよう確かめねばなりません。阿諛(あゆ)は、受ける側も与える側も腐敗させますし、追従(ついしょう)は、国王に対するのと同様、民衆のためになるものではありません。したがって、私は、フランスの新しい自由が、政府、公権力、軍隊の規律と服従、効果的できちんと分配された歳入の徴収、道徳と宗教、財産の堅実性、平和と秩序、市民と社会の慣習とどのように結びついているかを知るまでは、祝辞を控えねばなりません)― cf. 半澤訳、p. 13
革命によって、旧体制が改まったということだけを称賛するわけにはいかない。そのことによって、フランスの政治、社会、文化がどのように変わったのかを確認するまでは、これを評価するわけにはいかないということである。
All these (in
their way) are good things, too, and without them liberty is not a benefit
whilst it lasts, and is not likely to continue long. The effect of liberty to
individuals is that they may do what they please; we ought to see what it will
please them to do, before we risk congratulations which may be soon turned into
complaints. Prudence would dictate this in the case of separate, insulated,
private men, but liberty, when men act in bodies, is power. Considerate people,
before they declare themselves, will observe the use which is made of power and
particularly of so trying a thing as new power in new persons of whose
principles, tempers, and dispositions they have little or no experience, and in
situations where those who appear the most stirring in the scene may possibly
not be the real movers.
(すべてこれらも(それはそれで)良いことでありますし、これらがなければ、自由は、存続していても恩恵を齎(もたら)しませんし、長続きしそうもありません。自由が個人に齎すものは、好きなことをしてもよいということです。私達は、すぐに不満へと変わるかもしれない祝辞を敢えて述べる前に、彼らが何をするのが喜ばしいかを確認すべきなのです。個々の、分離された、私人の場合は、慎重であればこうするでしょうが、自由は、組織立って行動すれば、権力となります。思慮深い人であれば、所信を述べる前に、権力、とりわけ、信条、気性、気質について全くと言って良いほど見聞のない新しい人物が、その場で最も刺激的に見える人達が、ひょっとすると真の推進者ではないのかもしれないという状況において、新しい権力といった厄介な物を使用するのを目の当たりにするのです)― cf. 同
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