バーク『フランス革命の省察』(8)人間の権利
We wished at the period of the Revolution, and do now wish, to derive all we possess as an inheritance from our forefathers. Upon that body and stock of inheritance we have taken care not to inoculate any scion alien to the nature of the original plant. All the reformations we have hitherto made have proceeded upon the principle of reference to antiquity; and I hope, nay, I am persuaded, that all those which possibly may be made hereafter will be carefully formed upon analogical precedent, authority, and example.
(私達は、私達の所有するすべてのものを、先祖からの相続財産として得ることを、革命の時代にも望んでいましたし、実際今も望んでいます。このような継承の本体と幹に、元の植物の性質とは異なる若枝に植菌しないように配慮してきました。これまで行ってきたすべての改革は、古い時代を参照するという原則に基づいて行われてきました。そして、今後行われる可能性のあるすべての改革は、類似の先例、権威、模範に基づいて慎重に行われることを希望します、否、確信します)―
cf. 半澤訳、p. 41
フランス革命は、「自由・平等・博愛」を旗印に、人間を抑圧から解放するという名目で行われた、過去を破壊する暴動であった。
In the
famous law of the 3rd of Charles the First, called the Petition of Right, the
Parliament says to the king, "Your subjects have inherited this
freedom": claiming their franchises, not on abstract principles, "as
the rights of men," but as the rights of Englishmen, and as a patrimony
derived from their forefathers.
(「権利請願」と呼ばれるチャールズ1世治世第3年の有名な法律で、議会は、国王に対し、「陛下の臣民は、この自由を相続してきた」と述べ、抽象的な原則に基づいた、「人間の権利として」の特権ではなく、イギリス人の権利としての、また彼らの先祖に由来する財産としての特権を主張しています)―
cf. 半澤訳、p. 42
ここで、今では「人権」(Human Rights)と呼ばれている、「人間の権利」という言葉が初めて登場する。バークは、この言葉に猛烈な批判を行った。バークは、「人間の権利」などという抽象的権利ではなく、先祖由来の相続財産としての、既に実際手にしている「イギリス人の権利」こそが「権利」であると主張したのだった。
視点を変えて言えば、「人間の権利」には、<権利>と<義務>は表裏一体のものでなければならないという考え方が欠落している。が、<権利>を一方的に行使してしまっては、現実問題として、社会秩序は保てなくなってしまうだろう。
よくよく考えれば、<人権>という言葉はあっても、これに対応する<義務>に当たる「人義」や「人務」というような言葉はないことからも、<人権>が義務感を欠いた一方的な権利主張であることが分かる。
詰まり、義務感を欠いた権利意識が暴走してしまったのが「フランス革命」という騒動だったということである。
Selden, and
the other profoundly learned men who drew this Petition of Right, were as well
acquainted, at least, with all the general theories concerning the "rights
of men" as any of the discoursers in our pulpits or on your tribune: full
as well as Dr. Price, or as the Abbé Sièyes. But, for reasons worthy of that
practical wisdom which superseded their theoretic science, they preferred this
positive, recorded, hereditary title to all which can be dear to the man and
the citizen to that vague, speculative right which exposed their sure
inheritance to be scrambled for and torn to pieces by every wild, litigious spirit.
(この「権利請願」を作成したセルデンなど造詣の深い人々は、少なくとも、我が国の説教壇や貴国の演壇で演説する人々の誰にも負けないくらい、プライス博士やアベ・シェイエスと充分同じくらい、「人間の権利」に関するすべての一般理論に精通していました。しかし、理論科学に勝る実践知に値する理由から、彼らは、自分たちの確実な相続を、あらゆる野蛮で訴訟好きの精神が奪い合い、千々(ちぢ)に引き裂く、あのはっきりしない、危険を孕(はら)んだ権利よりも、人間や国民にとって大切であろうすべてのものに対する、この明確で、記録済みの、世襲の権利の方を選んだのです)― cf. 半澤訳、同
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