バーク『フランス革命の省察』(23)世襲貴族の必要性

《貴族団は世襲的でなければならぬ。それは第1にその本性によって然(しか)りであるが、さらにまた、貴族団はその特権を保持することに非常な関心を持たざるをえないのである。かかる特権は、それ自体において忌(い)むべきものであるから、自由な国家にあってはたえず危険にさらされざるをえない。

 しかし、世襲的権力はその特殊的利益を追求し、人民の利益を忘却するようにみちびかれるかも知れぬゆえ、この権力を腐敗させればだれかがこの上ない利益をえられるというような事項、たとえば金銭の徴収に関する法においては、この権力は、もっぱら阻止する権能によってのみ立法に参与すべきであって、命令する権能によってすべきではない》(モンテスキュー「法の精神」第11篇 第6章「イギリスの国家構造について」:『世界の大思想16』(河出書房新社)根岸国孝訳、p. 155

 現在は、独り今を生きる人達の営為だけではなく、過去の歴史の積み重ねの上にあるのであって、過去から引き継いだ文化伝統、慣習慣例を無視しては成り立たない。が、生者は、このことを忘れがちである。政治制度においても、選挙によって代表を選ぶやり方では、世間の熱し易く冷めやすい感情たる「世論(せろん)」(popular sentiments)に従うことは出来ても、歴史伝統に根差した「輿論(よろん)」を汲み上げることは出来ない。この穴を埋めてくれるのが、世襲貴族という存在なのである。

 貴族の関心事は、ただ世襲財産にだけあるのではなく、それに纏わる歴史伝統にも当然及ぶ。社会秩序に関するものもあれば、道徳規範に関するものもある。詰まり、貴族がいることによって、国家の秩序が安定的に保たれる側面があるということなのである。

Dr. Price considers this inadequacy of representation as our fundamental grievance; and though, as to the corruption of this semblance of representation, he hopes it is not yet arrived to its full perfection of depravity, he fears that "nothing will be done towards gaining for us this essential blessing, until some great abuse of power again provokes our resentment, or some great calamity again alarms our fears, or perhaps till the acquisition of a pure and equal representation by other countries, whilst we are mocked with the shadow, kindles our shame." To this he subjoins a note in these words: —"A representation chosen chiefly by the Treasury, and a few thousands of the dregs of the people, who are generally paid for their votes."

(プライス博士は、このような代表制の不備こそが、我が国の根本的な不満の種と見做し、この上辺(うわべ)だけの代表制の腐敗について、未だ完全な腐敗にまでは至っていないことを願っておられますが、「何か大きな権力の乱用が再び我々の怒りを買うか、何か大災害が再び我々の恐怖を呼び覚ますか、ひょっとしたら、我々がその影に欺かれている間に、他国が純粋で平等な代表制を獲得して、我々が恥辱に塗(まみ)れるまで、この絶対必要な恵みを手に入れることに向けて何もなされないだろう」と博士は危惧しているのです。これには次の言葉が書かれたメモ書きが添えられています。「主として国庫と、通常投票の対価として支払われる数千人の国民の屑(くず)どもによって選ばれる代表制」)― cf. 半澤訳、pp. 71f

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