バーク『フランス革命の省察』(36)過去は方位磁石
When ancient opinions and rules of life are taken away, the loss cannot possibly be estimated. From that moment we have no compass to govern us, nor can we know distinctly to what port we steer. Europe, undoubtedly, taken in a mass, was in a flourishing condition the day on which your Revolution was completed. How much of that prosperous state was owing to the spirit of our old manners and opinions is not easy to say; but as such causes cannot be indifferent in their operation, we must presume, that, on the whole, their operation was beneficial.
(生活についての古来の意見や規則が失われたときの損失はとても計り知れません。その瞬間から、私達は自らを治める方位磁石を持たず、どの港にむけて舵を取っているのか、明確に知ることも出来ません。欧州は、貴方方の革命が完了したその日、間違いなく、概して、繁栄した状態にありました。その繁栄状態のうち、どれくらいが私達の古来の慣習や意見の精神によるものであったかは、簡単には言えませんが、こういった原因がその作用において公平では有り得ないように、全体として、その作用は有益であったと推定されなければなりません)―
cf. 半澤訳、pp. 99f
過去を抹消するということは、方位磁石も地図も持たずに旅に出るようなものである。過去を参照すれば、今自分がどの地点にいるのかが分かる。過去を参照すれば、これから進もうとしているのがどの方向なのかも分かる。時代遅れになったところがあれば、その部分を修正すればよい。が、部分的に問題があるからといって、全体を捨て去ろうとするのは、明らかにやり過ぎである。
We are but
too apt to consider things in the state in which we find them, without
sufficiently adverting to the causes by which they have been produced, and
possibly may be upheld. Nothing is more certain than that our manners, our
civilization, and all the good things which are connected with manners and
with, civilization, have, in this European world of ours, depended for ages
upon two principles, and were, indeed, the result of both combined: I mean the
spirit of a gentleman, and the spirit of religion. The nobility and the clergy,
the one by profession, and the other by patronage, kept learning in existence,
even in the midst of arms and confusions, and whilst governments were rather in
their causes than formed.
(私達は、とても残念ながら、物事が生み出されてきた原因、そして守られるであろう原因に、十分注意を向けることなく、物事を、自分が見付けた状態で考えがちです。私達の慣習、私達の文明、そして慣習と文明に関連があるすべての好事(こうじ)は、現在の欧州の世界では、昔から2つの原則に依存しており、実際、2つが結合した結果であったということ以上に確かなことはありません。詰まり、紳士の精神と宗教の精神です。貴族と聖職者は、一方は職業によって、他方は後援によって、戦いや混乱の最中にあっても、また政府が成立するというよりむしろその大義となっている間にも、学問を存続させ続けてきたのです)―
cf. 半澤訳、p. 100
我々は、過去からの恩恵にたっぷりと与(あずか)り生活している。そのことを忘れ、過去を断ち切ってしまえば、根を失った木の如く、いずれ枯れてしまうことになるだろう。
>Learning
paid back what it received to nobility and to priesthood, and paid it with
usury, by enlarging their ideas, and by furnishing their minds. Happy, if they
had all continued to know their indissoluble union, and their proper place!
Happy, if learning, not debauched by ambition, had been satisfied to continue
the instructor, and not aspired to be the master! Along with its natural
protectors and guardians, learning will be cast into the mire and trodden down
under the hoofs of a swinish multitude.
(学問は、受け取ったものを貴族と司祭職に返済し、彼らの思想を拡大し、彼らの精神を提供することによって、高利で報いました。もし彼らが皆、自分たちの永久不変の団結と、自分たちの適所が分かり続けていたなら、幸せだ!
もし学問が、野心に溺れることなく、指導者であり続けることに満足し、主人になることを志向しなかったとしたら、幸せだ!自然な保護者や守護者と共に、学問は、泥沼に投げ込まれ、不潔な群集の足下で踏み付けられるでしょう)―
cf. 半澤訳、同
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