バーク『フランス革命の省察』(49)泣く子も黙る4術語

Reason can furnish nothing to reconcile inconsistency; nor can partial favor be accounted for upon equitable principles. But the contradiction and partiality which admit no justification are not the less without an adequate cause; and that cause I do not think it difficult to discover.

(理性は、矛盾を調整するものを提供できません。また、依怙贔屓(えこひいき)を、衡平(こうへい)原理に基づいて説明することも出来ません。しかし、正当化を許さない矛盾と依怙贔屓であっても、それ相応の理由がないわけではありません。その理由を発見するのが難しいとは私は思いません)― cf. 半澤訳、p. 138

All these operose proceedings were adopted by one of the most decided tyrants in the rolls of history, as necessary preliminaries, before he could venture, by bribing the members of his two servile Houses with a share of the spoil, and holding out to them an eternal immunity from taxation, to demand a confirmation of his iniquitous proceedings by an act of Parliament. Had fate reserved him to our times, four technical terms would have done his business, and saved him all this trouble; he needed nothing more than one short form of incantation: —"Philosophy, Light, Liberality, the Rights of Men."

(これらすべて骨の折れる手続きは、歴史上最も決然とした暴君のうちの1人が、必要な準備段階として採用したものでした。その後、彼は、自らに隷属する2院の議員に獲物の分け前を賄賂(わいろ)として与え、さらに、彼らに永久に課税を免除することを約束することによって、自らの不正な手続きを議会法で承認するよう要求しようと思い立ったのです。もし運命が彼を現代に留めていたなら、4つの術語で彼の仕事は終わり、このようなすべての手間は省けたでしょう。彼が必要としたのは、1つの短い形式の呪文、すなわち、「哲学、啓蒙、自由、人間の権利」だけでした)― cf. 半澤訳、pp. 146f

 絶対的で無謬(むびゅう)の、デカルトの合理主義哲学、ルソーの啓蒙思想、フランス人権宣言の自由と人間の権利。これらが持ち出されれば、泣く子も黙らざるを得ない。なんとも厄介な代物である。が、ここで詳細に反論はしないが、これらは絶対的なものでも、無謬の存在でもない。そう思い込んでいるだけである。

 ただし、これらの観念は宗教的中毒性がある。一旦信じてしまったら、その洗脳を解くのは至難の業(わざ)である。どこに中毒性があるのかと言えば、これらは人間中心主義だからである。本来人間は、自然の中で生きている。だから自然の摂理に従わなければならない。が、人間中心主義は、人間の都合を最優先する。自然は人間に従属する僕(しもべ)である。<4つの術語>には、こういった夜郎自大さがべったりと貼り付いてしまっている感がある。

I can say nothing in praise of those acts of tyranny, which no voice has hitherto ever commended under any of their false colors; yet in these false colors an homage was paid by despotism to justice. The power which was above all fear and all remorse was not set above all shame. Whilst shame keeps its watch, virtue is not wholly extinguished in the heart, nor will moderation be utterly exiled from the minds of tyrants.

(私は、これまで如何なる偽善行為の下でも、称賛する声がなかった専制行為について、褒め称えて言えることなどありません。しかし、これら偽善行為の下でも、正義に対する敬意は、専制政治によって払われました。すべての恐怖とすべての後悔の上にあった権力は、すべての恥辱の上に置かれることはありませんでした。恥辱が監視を続けるうちは、心の中の美徳が完全に失われることもありませんし、専制君主の心から、節度が完全に追放されることもないでしょう)― cf. 半澤訳、p. 147

I believe every honest man sympathizes in his reflections with our political poet on that occasion, and will pray to avert the omen, whenever these acts of rapacious despotism present themselves to his view or his imagination

(私は、あらゆる正直者が、この時の政治的詩人の考察に共感し、強欲な専制政治のこういった行為が彼の目の前や心の中に現れるたびに、その前兆を回避するように祈るだろうと思うのです)― cf. 半澤訳、同

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