ザ・フェデラリスト(12)モンテスキューの連邦制の解説
《ギリシャの幹にいく久しく花のよそおいをせしめたのはこれらの連合であった。これによってローマ人は世界を攻撃し、また、これによってのみ世界はローマ人を防いだ。しかしてローマが極盛に達したとき、ダニューブ河・ライン河の背後の諸他の連合、恐怖がつくらしめた連合によって、蛮民はよくローマに抵抗しえたのである。
オランダ、ドイツ、スイス連邦が永久共和国とヨーロッパでみなされているのはこれによる。
都市の連合は往時は現今よりもいっそう緊要であった。無力な都市国家は、より大なる危険にさらされていた。征服はかれに今日のごとく、執行権、立法権を喪失せしめるのみならず、さらに人々の所有するあらゆるものを失わせたのである。
外的勢力に抵抗しうるこの種の共和国は、内部が腐敗することなしに、その勢威を保持することができる。その結社形態があらゆる不都合を予防するのである。
簒奪を欲する者が現われるとしても、加盟国のすべてにひとしく信用を博することはほとんどありえないであろう。かれが一国内であまりに強力になれば、他のすべての国に恐怖をいだかしめるであろう。かれが一部分を制圧すれば、まだ自由な他の部分はかれが賃奪した兵力とは独立な兵力をもってかれに対抗し、覇業を成就せぬうちにかれを圧倒しうるであろう。
加盟国中の1つに動乱が起こっても、他の加盟国が鎮定することができる。どこかに悪弊がしみこんでも、それは健全な部分によって匡正される。だからこの国家はある部分は滅びても、他の部分は滅びないということが可能なのである。同盟は解散されることがありうるが、加盟国はいぜんとして独立国としてとどまりうるのである。
小共和国より構成され、この国家はその各共和国の内政の長所を保ちながら、外部にたいしては、連合の力によって、大きな君主国のすべての長所を持っている》(モンテスキュー「法の精神」:『世界の大思想16』(河出書房新社)根岸国孝訳、第2部:第9篇 法と防禦力との関連について:第1章 共和国はいかにしてその安全にそなえるか、pp. 133f)
トクヴィルは、連邦制を称賛しながらも、今後については懐疑的である。
《私ほど連邦制度の長所を認める者はいないはずである。私はそれに、社会の繁栄と人間の自由に好都合なもっとも強力な仕組みを見る。これを採用しうる諸国民の運命を羨(うらや)みもする。だがそれにもかかわらず、私は、連邦制の諸国が政治権力の集中した国家と長期間対等に戦いうると信じることは拒否するものである。
ヨーロッパの大規模な軍事的君主国に囲まれた人民が、万が一にもその主権を細分したとすれば、そのことだけでこの人民は権力を投げ出し、おそらくはその存在と名前まで放棄してしまうだろうと思われる》(トクヴィル『アメリカのデモクラシー』(岩波文庫)松本礼二訳、pp. 277f)

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